5/23/2007

戦争状態という日常

2006年度作品 「ブラックブック Black Book」 (144min)

我らがバーホーベン監督が本国オランダに帰国して作りあげた割と渾身の作品。ロボコップ前に追い出されるように国を後にした彼にとっては、本作が自国で高評価を得られた事は本当に嬉しかったのではないだろうか?
という事で一応ハリウッド作品は全作ちゃんと観ている僕としては仁義を通すべく行ってまいりました。しかしなんなんだこの公開規模の小ささは。これ書くのに確認し直して今気付いたが2時間以上あんのなコレ。長くは感じなかったなあ。いや短くさえ感じた。まぁやはり魅せる力はいつも通りという事なんだろう。面白かったんだけど、なんつーか普通。いや普通というか日常な感じなのだ。
もちろん映画で描かれているのは日常どころかナチス支配下のオランダで敵陣にスパイとして入り込む話だから恐怖と地獄の日々。しかし観終わった印象が異常な状況を観たという感じではない。理由は分かっているんだがこれは監督の世界観から来るものだろう。映画で描かれる時代に爆弾と死体の中で過ごした少年時代を持つ監督は暴力と死や裏切りなどというものが特別なものではないという視点を持っている。戦争状況の残酷描写に関しては黒帯のスピルバーグがさんざっぱらやってるので、今更おどろくという事もないのだが、スピルバーグの描写が子供の残酷さのような驚きの感覚を与えるのに対して、本作のバーホーベンの描写には「あーあ」的なやっちゃった感が漂う。交通事故的なしょうがなさ。さして「人が死ぬ」事が特別ではない感じ。
それはヒロインの造形にも言えて、冒頭と結末にキャラ的な変化がないのだ。普通なら異常な状況を潜り抜けたんだからなんかあると思うのだが、彼女は最初っからタフだし、最初からどこか諦観した雰囲気を持っている。
戦争だからどう という事ではなく、善人も悪人も裏切りもいつだってどこにだってあるという事なんだろうか。

★★

なんか無理にでも酷い描写を入れるのにはあきれるを通り越して感心すらする。

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